三年11

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 あの時の高屋の纏う空気はとても重苦しく、その中に入っては行けないようだった。  入って行けば、その重力場が狂ったような空間で押しつぶされてしまう気がしていた。  その一週間は由利も佐々木もほとんど口を利かなかった。  彼が落ち込んでいる理由を知らされていなかったが佐々木の様子からもただ事ではないと分かった。  だからその理由を訊こうとはしなかった。  そしてその理由を知らされたのはだいぶ時間が経ってから、もう時効だろうと言って佐々木が教えてくれた。  高屋が立ち直るきっかけというのはなかったと思う。  急に立ち直ったのではなく、徐々に元に戻っていったからだ。  おそらく、時間の経過とともに彼の中に諦めの感情が芽生えたのだと思う。  もう河合と話す機会がなくてもいいと、それで彼のいじめを止められたのだからと。  気が付くと由利の家の前にたどり着いていた。 「やっぱり、この土日は昼間でも家から出ないで欲しい」  佐々木が言ってきた。  不安にさせたくないが言わないわけにもいかないと少し躊躇いながらだった。  由利は首を傾げた。  昼間なら外出してもいいと言われていたのになぜ気が変わったのだろう。
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