三年12

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 授業が終わり教室から出ると、向かいの自習室から出てきた松木とはち合わせた。 「どうも、高屋さん。今日も授業ですか?」 「ああ、そうだ。週四で授業があるから平日はほぼ毎日授業だよ。このままじゃ受験ノイローゼで倒れちゃいそうだ」 「はは、大変ですね」  松木は同情したような表情になった。 「僕も来年にはそうなるんですかね」 「受験生とはそういうもんだ」 「そうなりたくないから今から結構頑張ってるんですけどね」 「お前、まだ帰らないのか?」  松木が鞄を持っていないのに気付いた。 「もうちょっとだけ」  松木は親指と人差し指で一センチぐらいの隙間を作った。 「このあいだの小テストが悪くて親から大目玉食らっちゃいました。次もしくじると洒落にならないんですよ」 「小テストぐらいどうだっていいだろ。あんなのに毎週毎週振り回されてたらもたないぞ」 「一回ぐらいならいいんですけど、それが続いちゃったんですよ。それを先生が家に直接電話しちゃって親はカンカンですよ」 「ろくでもない奴がいるんだな。誰だ、そいつは?」 「監督ですよ。うちの担任なんです。だから人一倍僕には厳しくて」 「お前もついてないな。こんなところで油売ってないで早く勉強しろよ」 「トイレに行こうと思っただけですよ。それで高屋さんと会ったんです。じゃあ言われた通り勉強に取りかかりますよ。高屋さんも頑張ってくださいね」 「おう。お前も頑張れよ」
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