三年13

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 翌日、佐々木は言った通り、レンタルビデオ店に来ていた。  広い店内だったが見て回ると意外とすぐに目当ての人物を見つけた。  あの中の一人だ。突っかかってきた男ではなく周りを固めていた、高屋風に言えばわき役だ。  最悪の場合、土日の二日ともここで過ごさないといけないのかもしれないと覚悟していただけに運が良かったと言える。  彼は今、家族連れの相手をして、アニメコーナーで説明を繰り返していた。  子供が彼の持っている二枚のDVDを真剣に見比べて悩んでいる。  どちらか一枚しか借りてもらえないのだろう。  これを邪魔するのは良くないと思い、時間を潰すために参考書のコーナーへ足を向けた。  参考書の品揃えはこのあたりでは一番だ。  同じようなものが数多く並ぶ。  佐々木はそのうちの何冊か手にとって見比べてみた。  何冊かざっと目を通すと不意に、参考書は買うという行為が一番重要なのではないかと思った。  買っただけで賢くなった気がするのだ。  佐々木の家の本棚にも買ってから一度しか開いていないものがある。  それはクラスのほとんどが持っていて、これで一気に理解が深まったと評判の本だった。  由利も高屋も持っていたので佐々木も買ってみようと思ったのだが、実際はそこまで分かりやすいということはなかった。  あらゆるものには合う合わないがある。  結局、自分には合わなかっただけだ。  あれこそ究極の無駄遣いだったなと思っていたが、あれを買わなければ周りから一歩遅れた気分になっただろうから必ずしも無駄だったとは言えないなと思い直した。
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