三年13

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 レンタルビデオ店を後にした佐々木はせっかくだから高屋が襲われた公園に行こうと決めた。  もしかしたらそこから新たな情報を得られるかもしれないと僅かな期待を抱いたからだ。  歩いて公園へ向かう。  佐々木はその間、考えをまとめていた。  さっきの彼の話では彼らは関係していないと見るべきだ。  一番疑わしいあの背の高い男もあり得ない。  事件は数カ月にわたってこの近辺で起きているのだ。  九州の大学へ通うあの男が犯人のはずがない。  また、小林の死因は今朝の新聞によればリストカットによる失血死だった。  リストカットと聞いて彼らが関係していると確信を深めていた。  去年の事件と今回の事件が関係していることを表すメタファーのように思えたのだ。  しかしそこが間違いだった。  彼の言うとおりもっと視野を広げるべきかもしれない。  視野を広げると言うよりかは視点を変えてみるべきだ。  このままではいつまでたっても正解にはたどり着けない。  テストでも行き詰った時は始めから違う視点で組み立て直すとうまくいくことがある。  まずこの事件に関わっているのではないかと思ったのは高屋が襲われたからだ。  その後に聞かされた話から考えても、強姦魔に間違えられたことは疑う余地がない。  これは偶然なのか?  次に小林がこの事件の被害者になった。  これも偶然だったのか? もし必然だとするとどうなる?
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