三年14

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 ここはどこだろう?  どこかの学校みたいだ。  校門の前には何人もの生徒と保護者がいて写真を撮っている。  生徒の手には卒業証書を入れる筒があった。  それでこれは卒業式だな、と気付いた。  だけどみんなの顔は幼い。  おそらく中学生だ。  由利は校門を離れ、少し歩くと見知らぬ顔の中に佐々木を見つけた。  男三人、女二人のグループの中にいた。  近づいてみると顔がやはり幼い。  声をかけてみようとするが声が出ない。  どうしたんだ、と不安になって佐々木に向かって手を振るが気付かれない。  目はあっているのに知らんふりだ。  そして佐々木たちのグループが歩いて行ってしまった。  慌てて追いかけて、一番後ろを歩いている佐々木にふれようとしたが触れない。  距離は何センチもないのに、いざ触ろうとすると遠ざかってしまう。  由利がもがくように佐々木に手を伸ばしていると、横からふわっと香水のいい香りがした。  背が高い髪の長い女の子が佐々木の肩にふれた。  佐々木が振り返る。 「どうしたの?」 「ちょっと話があるんだけど……」  女の子が言う。 「何?」 「ちょっといい?」  そう言って女の子は手招きをした。  佐々木は前を歩く仲間に、「先に行ってて」と告げて女の子に着いて行く。  由利も後を追う。  その間、何度も声を出そうとし、ふれようともしたが出来なかった。  二人は下駄箱の裏で隠れるように立ち止った。
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