三年14

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 携帯電話のアラームの音が耳元で鳴った。  手を伸ばして音を止める。  目をこすると、今いるのは自分のベッドの中だと由利は気付いた。  今のは夢だったのかと安心したが、あまりにもリアリティがあってまるでドキュメンタリーを見ているようだった。  あれはもしかしたら本当にあったことではないだろうか。  とりあえずパジャマから着替えてリビングに行った。  リビングではお母さんがテレビを見ていて、お父さんが新聞を読んでいた。 「あ、おはよう。すぐご飯、用意するね」  お母さんはそう言ってキッチンに行った。 「ありがとう」  由利はソファに座ってテレビを見た。  土曜日の朝らしく情報番組をやっていた。  しばらくしてお母さんがトーストと果物を持って来てくれた。  それを食べるとすぐに部屋に戻った。  ベッドに腰掛け、意味もなく鞄の中を探った。  やはり鞄には何もなく床に戻した。  昨日のことが気になっていた。  佐々木には家から出るなと言われたが、佐々木の様子はいつもと違った。  今の佐々木一人で行くのはまずいかもしれない。  そう考えると不安になり、さすがに朝のうちなら大丈夫だろうと思ったので、由利はレンタルビデオ店へ様子を見に行くことにした。
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