三年14

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 そう決意したものの、やはり佐々木から言われていたことが気になった。  佐々木に会ったら何と言われるだろうか。  自分には温厚な佐々木も今回ばかりは怒るのではないだろうか。  外出準備も済ませ家を出る準備は終わっているのだが背中を押すものがない。  それでも由利は無理矢理自分を奮い立たせ家を飛び出した。  今日は昨日と違い晴れ渡っていた。  いつもであれば気分良く家を出られるのだが、襲われるかもしれないという恐怖感と佐々木との約束を破っている罪悪感で一歩一歩が重い。  だけど、あのまま家にいる方が気が重かったはずだ。  自分にそう言い聞かせた。  レンタルビデオ店に着いて店内を見て回る。  二周したが佐々木の姿はない。  こういう時には佐々木は必ず開店時間から来ているはずで、今いないということはつまりもう帰ってしまっているということだ。  家を出る前にやっぱり止めようかと悩んでいたせいだ。  店の周りも探してみたがやはり見当たらない。  仕方がないので帰ることにした。  結局無駄足に終わったことは残念でもあったし、安堵もした。  そして、佐々木は大丈夫だったのかなと考えていた。  もし佐々木の言うとおりここの店員が犯人だったとしたらどうしたのだろう。  気になるので家に帰ってから電話を入れようと決めた。
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