三年14

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 その時、後ろから誰かついて来ている気配を由利は感じた。  誰かいる。  一瞬、佐々木かなと思って振り向くがすぐに隠れられた。  人ごみの中に紛れ込んでしまったのだ。  佐々木じゃない。  もしかして狙われている?  今いるのは人通り多い道だが人が少なくなるとまずいのではないか?  歩くスピードが自然と早くなる。  それに合わせるように後ろから足音が聞こえる。  間違いない。  自分をつけているのだ。  そう思うと、もう振りかえることは出来ない。  とにかく人の多いところを探す。  頭の中をフル回転させるが、こういう時は決まって空回りする。  何も思い浮かばない。  歩くスピードを緩めるとすぐに捕まえられそうで気ばかりが焦ってくる。  どうしよう。  交番に逃げ込もうか?  この辺の交番ってどこだ?  そもそも自分は今どこにいるのだ?  それすらも分からないほどパニックになっていた。  とにかくじっとはしていられない。  佐々木の言うとおり家から出るべきじゃなかったと後悔したがもはや手遅れだ。  何人も歩いているはずなのに一つの足音だけはっきり聞こえる。  それが自分が足を着くのと同じタイミングで鳴るのが余計に気持ち悪い。  助かる方法はあるのか?
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