三年14

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 嫌なことばかりが頭をよぎる。  腕を掴まれ口を押さえられ引きずられていく。  そして車に連れ込まれ、手足を縛られたまま長時間のドライブが続く。  始めは見たことがある景色だったが次第に見たこともない風景が窓の外を流れていく。  声を出そうにもガムテープが貼られ声が出せない。  車が止まって外を見ると、連れて行かれたのは見たこともない山奥だった。  男が覆いかぶさってくる。  駄目だと思い強く目を閉じた。 「由利」  急に自分の名前が呼ばれて飛び上った。  悪夢からひきもどしてくれたその声は聞き覚えがあった。  世界で一番安心感を与えてくれるものだ。  ぱっと横を見るとやっぱりそこには佐々木がいた。  ベンチの前で立っている。  由利は安心して泣き出しそうになった。  嬉しすぎて声が出ない。  その時に自分が公園に来ているのに初めて気付いた。
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