三年15

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「え? お前、高屋って奴がここで襲われたの知らないの?」 「それは知ってますよ。それがどうかしたんですか?」 「知っててここに来たのかよ。あの高屋って奴も襲われた次の日にまたここに来てるし、お前らは勉強以外はからっきしか?」 「いや、そもそも何であなたがそんなこと知ってるんですか?」  佐々木はわけが分からなくなってきた。  話の先が見えてこない。 「何でって、そりゃそこにいたからに決まってるだろ」 「そこにいた?」 「鈍いな。自分で言わせるなよ。俺が助けてやったんだよ、あいつを」  男は照れているようにも自慢しているようにも見えた。  高屋を助けたのはこの男だというのか。  この男があのひったくりだというのも信じられないが、それ以上に助けたというのはもっと信じられない。  もう一度、今聞いた話を反芻してみた。  最初はこの男が犯人ではないかと思って話を聞いてきた。  その先入観は捨てて一から会話を思い返してみる。  この男は以前、ひったくりとして佐々木たちに捕まった。  そして今、目の前に現れて高屋を助けたと言っている。  また高屋が襲われた事件は警察沙汰にしていなくて普通の人なら知りえない。  しかも翌日もここに来たということまで知っているのならこの男が嘘を言っている可能性は極めて低い。  佐々木はこの男の話を信じてもいいのではないかと思った。
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