三年15

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 どうやって? と訊こうと思った時、目の端に由利の姿が映った。  外出は禁止しておいたはずなのに何でこんなところにいるんだ?  佐々木は考えるよりも先に、「由利」と言葉を発していた。  由利はビクッとしてこちらを向いた。  今にも泣き出しそうな顔でこちらを見てきて、動かなくなってしまった。  佐々木は由利に近づいて行く。 「どうしてこんなところにいるんだよ?」 「いや、だって……」  由利は瞳に涙を溜めていた。 「昨日、家から出るなって言っただろ。今度は本当にまずいかもしれないんだ」  佐々木の口調はかなり強くなっている。  高屋ならまだしも、まさか由利がこんなことをするとは思わなかった。 「おいおい。お前の彼女か?」  男が間に入ってきた。 「そうですけど」 「泣きそうになってんじゃねえか。女の子には優しくしないといけないだろ」 「今はそういう問題じゃないんですよ」 「まあいい。お前らに何があるのか知らないけど、とりあえず月曜の夜にここに奴らを連れてくる。またその時な」  そう言って男は立ち去った。
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