三年1

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 十月に入り、幾分肌寒くなってきたが、眩しい日差しにはまだ夏の余韻を感じる。  そのためブレザーを着るにはまだ早いと思うのだが、学校指定なので仕方ないと言えば仕方ない。  今年は異常気象とも言えた夏の暑さをひきずっているのか、昼間には半袖で過ごす人も珍しくないほどの気温だった。  天気予報によれば、来週には平年並みに落ち着くらしいが、にわかには信じがたい。  佐々木大祐は駅の改札を抜け、学校へと向かっていた。  駅を出るとすぐにコンビニエンスストアが見える。  この駅の周りだけで三店舗もあり、飽和状態に見えるがそれぞれの売り上げはそんなに悪くないらしい。  今、目の前に見えている店にも、通勤、通学と思われるスーツや制服姿の客でまずまず混んでいた。  その様子を一瞥して先に進むとマンションが立ち並ぶ。  ここはニュータウンで新しい建物が多い。  しかし、その中にも都市開発前からあるであろう団地もあり、まさに発展途上という感じだった。  この道を通るようになってから二年半の月日が流れた。  大学受験を半年後に控え、この道をこの季節に通るのは最後だなと考えながら見慣れた道を進んでいる。  街路樹が色づくにつれ、その思いが強くなっていた。  中学生の時にはそんな感情になったことはなかったが、高校生である今は強く感じる。  年齢を重ねたということなのか、今の時間が特別なのか、自分では分からない。
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