三年17

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「なあ。俺のことを嫌ってる奴って誰かいないか?」  佐々木が訊いた。ずっと考えていたがやはり誰も思い浮かばなかった。 「さあな。お前も言ったように結構、お前のこと良く思ってない奴っていたからな。友達だから今まで黙ってたけど」  やっぱりそうなのかと肩を落とした。  自分が嫌われていることではなく手がかりがないことに、だ。 「八方ふさがりか」 「何とか思いつかないのかよ? 自分のことだろ」 「勝手に逆恨みされてるかもしれないんだ。そういうことなら俺よりもお前の方が詳しいだろ」 「そんなこと言われてもなあ」  高屋はそう言って首を傾げている。  ここもやはり違う視点で考えるべきだと佐々木は一度頭の中をリセットさせた。  今の時点で恨みを持っている奴を探すのは不可能だ。  別の方法で絞っていった方がいい。  犯人は誰かではなく、もし自分が犯人だったとしたらどうする? まず何をする?   自分を苦しめるための犯行だったとしたら、その苦しんでいる様を見ようとするのではないか。  そう考えると、最近新しく出会った人間、もしくは急に親しくなった人間ということになる。  最近の出来事を思い出す。  高屋が襲われる前は特に変わったことはなかった。  基本的にいつも三人で行動していた。  そして高屋が襲われた。  これが一つ目の分岐点だ。  だけど、その後も何も変わりなかったはずだ。  次に小林が被害に遭ったことを知らされた。  そこで初めて職員室に呼ばれることになった。
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