三年17

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 ここで体中を電流が駆け巡ったようにぱっと一つのことを思い出した。  ここ最近で新しく出会った人間と言えば鈴木じゃないか。  だけど、あの弱々しい生徒指導が今回みたいに世間を賑わすことをやってのけられるのだろうか。  いや、そういう先入観は余計だ。  あいつとどんな話をしたっけ?  佐々木は鈴木との会話をもう一度頭の中で繰り返してみる。  そこで、何かが引っかかった。  この違和感は何だ?  何度繰り返してみても必ず引っかかる。  傷ついたCDのように一か所だけノイズが聞こえる。  あそこであんなことを言うのは明らかに変だ。  だけどこんな些細なことだけで特定してしまってもいいのか。  土曜日と同じ轍を踏むことになってしまうのではないか。 「どうしたんだよ?」  高屋が訊いてきた。  様子が変わったのに気付いたのだ。 「鈴木だ。犯人は鈴木かもしれない」 「鈴木って誰だよ?」 「うちの生徒指導だよ。お前、何回も呼ばれてるだろ」 「ああ。そっちのほうか。鈴木って名前が多すぎるんだよ。野球部にも鈴木っていたし、他にも何人かいなかったか?」 「そんなことは今はどうでもいいだろ。でももし犯人が鈴木だったとしたら、お前に化けたのにもう一つの意味が出てきた」 「他にも何かあるのか?」  そう言い終えるかどうかのところで高屋が大声を上げた。 「あ!」
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