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由利は佐々木に送ってもらった後、就寝準備を済ませ机に向かっていた。
いつも通り、一日の復習に取りかかっていたのだが、図書館にいた時と同じように集中出来なかった。
二日経った今でもあの時の恐怖感が纏わりついてくる。
頭を切り替えなければと思えば思うだけ集中出来なくなる。
これではやるだけ無駄だと思い、一旦休憩することにした。
リビングに飲み物を取りに行く。
リビングに行くとお母さんがまだソファに座ってテレビを見ていた。
「あら、どうしたの?」
「ちょっと集中出来なくて」
由利はそう言ってお母さんの隣に座った。
「まあ、あんなことがあったあとだもんね。近くの高校の生徒があんなことになったら、そりゃ不安になるよね」
お母さんは小林と佐々木の関係を知らない。
そもそも小林の名前は遺族の意向で報道されなかった。
小林のことを知っていたとしても、まさか今回の事件の被害者が小林だとは思わないはずだ。
「よりによって何でこんな時期にって感じ。もう結構切羽詰ってきてるのに」
出来るだけ他人事のように話そうと決めた。
下手な心配はさせたくなかった。
「佐々木君は本当にいい子よねえ。自分も勉強しなきゃいけないのに、わざわざ送り迎えまでしてくれて」
「大祐君は優しいからね。元々頭もいいし」
「あらあら、のろけちゃって。でも、佐々木君と付き合うようになってから、あんたの成績も上がったもんね」
「そうだね。まあ、あたしが頑張ったっていうのもあるんだけどね」
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