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お母さんはフフッと笑った。
「そうね。あともうちょっとだから、そのまま頑張りなさい」
「あとちょっとってまだ半年もあるよ」
「そんなこと言ってたらあっと言う間に過ぎちゃうよ。だけど無理だけはしないでね」
「うん。ありがとう」
台所に行って、水を一杯飲んでから部屋に戻った。
お母さんと話したことで少し気が楽になったがまだいろんなことが頭の中を渦巻いている。
小林のことを知らないお母さんのことがうらやましかった。
真実には辛い事実が必ず含まれる。
いっそのこと、何も知らないままの方が良かったと思ってしまう。
あれ、と思った。
何で自分は小林が被害に遭ったことを知っているのだろう?
普通はお母さんのように被害者が小林だなんて知りえないはずだ。
最近のことを振り返る。
小林が被害に遭ったと言うのは高屋から聞かされた。
なぜ高屋はそのことを知っていたのか?
まさかと考えてしまう。
そんなはずはないと頭を振るが、なかなか剥がれ落ちてくれない。
高屋がそんなことをするはずがないと思うが、小林のことを知っていたことに説明がつかない。
確か、職員室で聞いたと言っていたが、遺族の意思で名前が伏せられていたのに警察が一般人である学校の先生に言うだろうか。
それも、犯人がまだ確定していない状態では尚更ありえないのではないか。
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