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一晩考えたが、結局、佐々木はまだ警察に行かないことにした。
その理由は二つある。
一つはまだ証拠がないこと。
もう一つは急がなければ由利が危ないということ。
警察に行ったところですぐに動いてくれるとは限らない。
特に、いち高校生の意見など後回しにされるのではないかという気がした。
そこで、決着の手段として佐々木が選んだのは直接対決だ。
鈴木と膝を突き合わせて自分の推測をぶつけることにした。
そうすれば必ず何か出てくる。
もし本当に鈴木が犯人であったらの話だが。
佐々木は今、職員室の前の廊下にいて、鈴木を待っていた。
隣には由利と高屋がいる。
先に帰れと言ったのだが、どうしても付いて来ると言って聞かなかった。
「なあ、本当に鈴木で間違いないのか?」
高屋が訊いてくる。
「自信はない。まだ分からないこともある。だけど昨日も言ったけど、時間がないんだ」
これも間違いだったらという不安がないわけではない。
「頼りないな。大丈夫かよ?」
「けど、多分間違いない。それよりもついて来るのはいいが、余計な口出しはするなよ」
高屋はむっとした顔になった。
「分かってるって」
「ちょっと考えたんだけど」
今度は由利が口を開いた。
「あんまり役には立たないだろうって思うけど、大祐君がさっき、何で俺に告白したんだろうって言ってたよね。あたし、もしかしたらって思うことがあるんだけど」と自信なさ気に説明してきた。
それも佐々木にとっては分からないことの一つだ。
その告白してきた彼女にとっても、佐々木が由利と付き合っているのは知っていたはずで、告白したところで成功するはずがないのは分かっていたはずだ。
由利の説明はさすがだった。
佐々木一人では永遠に導けなかった答えだ。
なるほど、そういうことかと深く納得した。
同時に、もしそうであったなら、彼らはフック船長と同じ末路をたどってしまったのかと少し同情してしまった。
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