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「それで、話というのは?」
鈴木が身を乗り出して訊ねる。
前より少し堂々としていた。
上司の木島がいないからだろう。
「このあいだ、先生が僕に何か知っていることはないかって訊かれましたよね」
「ああ、訊いたよ。何か思い出したのか?」
「思い出したというよりも、先生に言われてから色々と考えてみたんです。そしたら一つの結論に至りました」
「と言うと?」
鈴木の眉間にしわが寄る。
「最初から一つずつ話をすると、まず犯人が高屋の格好を真似た理由です。最初は高屋に恨みがあってそんなことをしたのかと思いましたが、実はそうじゃなかったんです」
「そうじゃなかったら、どうして犯人はそんなことをしたんだろう?」
まだ鈴木は余裕だ。
「僕に恨みを持っていたからです。犯人は僕の周りから攻撃しようとしてきました。その一環として高屋を犯人に見せかけるといった行為に及んだんだと思います。そして、あわよくば僕にもその流れ弾が当たればとも思っていたんでしょう。高屋に化けるのはそう難しくないが、僕に化けるのはまず無理だ。だから高屋の相方として僕が浮上するような展開も考えていたはずです」
「なるほど。でもそれはちょっと話が飛躍しすぎている気もするが。どうしてそういう風に思うんだい?」
鈴木の表情に変化が現れた。
少し焦っている。
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