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「ああ、そういうことか。確かにお前を苦しめたいんだったら、お前の様子を見たくなるもんな」
高屋が頷いている。
「分かったら、とにかく今は黙ってろ」
そうは言ったものの、高屋のおかげで急ぎすぎている自分に気付いた。
一個一個丁寧に話すつもりだったのに、いざ話し出してみると早く結論に行こうとしている。
肝心なことを言い忘れていた。
まだ宣戦布告が出来ていない。
鈴木の方へ向き直る。
今度ははっきりと焦っているのが見える。
自分の推測が当たっていると一つ自信を深めた。
「そこで、僕に恨みを持っている人間を探しました。最初は全く見当もつきませんでしたが、高屋から一つの事実を知らされました」
「何だ、それは?」
鈴木がかろうじて言った。
言い当てられるのを覚悟しているみたいだ。
「去年、僕は一個上の先輩から告白されました。だけど、その告白してきた相手というのは、まだその時付き合っている人がいたみたいなんです。そしてそのことが原因で別れてしまった。だからその彼が僕を恨んでるんじゃないかと思うんです」
そう言って佐々木は鈴木の目をまっすぐに見た。
お前が犯人なんじゃないのかという気持ちを込めて。
名前こそ出さなかったがその人物は一人に特定されたはずだ。
これが宣戦布告の合図だ。
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