三年19

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「そうですか。じゃあ、もう一つ。高屋が被害者が小林だったと知っていたことも変です」  佐々木はここで二枚目のカードを切った。 「何でだよ? 俺はこの先生から聞いたぜ」  またしても高屋が口を挟んできた。  ここまで、ずっと犯人はぼかしていたのにはっきりと特定してしまった。  確信がないから名前を出さなかっただけにすぎないからどうでもいいのだが、もうこいつは無視しようと思った。 「高屋に小林が被害に遭ったというのを言う必要はなかったはずです。そもそも、警察はその彼に直接名前までは言わなかったんじゃないでしょうか。ご存じだとは思いますが、小林の名前は遺族の意向で公表されませんでした。どっちにしろ、小林の名前を高屋が知っているのはおかしい」 「ちょ、ちょっと待て。今言ったのも、さっき言ってた違和感も僕には分からないんだけど。それはどうとでもとれるし、君の都合のいいように解釈しているだけじゃないのか。確かに君の言っていることも分かるけどね、それだけじゃ警察に報告出来ないよ。君はおかしいと言っても、実際に起こり得ないとは言い切れないだろ。君は理系だから、全てを論理的に説明出来ないと納得出来ないんだろうけど、全てが論理的に説明出来るわけじゃないんだよ」  鈴木の口数が急に多くなった。  それだけ的確に事実を言い当てているということだ。
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