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「理系とかはあまり関係がないと思うんですけどね。もちろん、今言った話も自分の推測だって分かっています」
「じゃ、じゃあ、まだ他に何か証拠でもあるのか? それだけ自信満々に言うからにはまだ何かあるんじゃないのか?」
鈴木はびくびくしながら言った。
ゆっくりと息を吐きだし、佐々木は首を振った。
「いえ、残念ですけど、これ以上は……」
始めから持っている手札は二枚だった。
もうこれ以上鈴木を追い詰める材料はない。
ここで認めてもらうことが理想だった。
何とか、今あるものだけで勝負しないといけない。
鈴木はそれを聞くと一転して勝ち誇ったように嬉しそうな顔になった。
「そうか。じゃあ、話はこれで終わりだね。話は参考にさせてもらうよ」
「これだけ犯人を示す状況があるんです。認めてもらうことは出来ないでしょうか?」
「難しいだろうね。多分、警察に言ってもそれだけじゃ、相手にしてもらえないだろうからな。その犯人もしらを切ると思うよ」
「僕はこれだけの話があれば十分に警察はその彼を調べると思います。証拠を残してないはずがありませんから捕まるのも時間の問題です」
「君がそう思うならそうすればいいんじゃないのか」
これは最悪の事態になった。
予想通り鈴木は捕まることを覚悟している。
そして例え佐々木が今すぐに警察に行ってもすぐには自分が逮捕されることはないと分かっている。
つまり、まだ由利を襲うには十分な時間が残されているということだ。
ばれてしまった以上、もう正体を隠す必要がないのだから何をしてでも成し遂げてしまうだろう。
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