三年19

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 鈴木は項垂れて震えている。  思い当たることがあるのだろう。 「明日にでも警察にこの話をしに行こうと思います。先生の言うとおり、どこまでまともに取り合ってもらえるか分かりませんけどね」  恐る恐る顔を上げた鈴木と目が合った。 「もういいでしょう。これで終わりだ。由利には絶対手を出すな」  鈴木は魂が抜けたように生気がなくなった。  本当に終わりだと悟っていた。  しばらくの沈黙が続いた。  佐々木は一度天を仰いでから口を開いた。 「さっき、僕が告白されたって話をしましたよね。何でその人が僕に告白してきたんだろうって不思議でした。当時から僕は彼女と付き合っていましたからね」  そう言って由利の方に顔を向ける。  そしてすぐにまた鈴木の方を見る。 「だけど、彼女が教えてくれました。多分、生徒と教師の恋愛なんて許されることじゃないですから、その彼はずっとびくびくしながら付き合っていて、その人としては、胸を張って自分と付き合っていると言ってほしかったんじゃないかって。だから、その人は僕に告白してその彼に嫉妬させようとしたんだと思います。僕が相手なら告白しても成功する可能性はないと分かっていたはずですから。だけど、その人の思惑は外れて、その彼は振られたと思い込んでしまった。その人としても、もう引っ込みがつかなくなり、結局別れてしまった」
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