三年19

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 罪を自覚しているものの、引っ込みがつかなくなったフック船長に残された選択肢は死しかなかった。  彼女も自分がしたことが間違っていたと分かっても、その時にはもう遅かった。  もはや埋めることが出来ない溝が出来てしまったのではないだろうか。  どういう経緯で別れに至ったのかは分からないが、彼女たちに残された選択肢は別れしかなかった。  ただ、ピーター・パンと違うのは、そこに正義はなく、残ったのは復讐の思いだけだった。 「本当にそうなのか? 君は僕と別れたかったんじゃないのか?」  鈴木はささやくように、そこにいるはずのない彼女に訊いていた。 「僕の話は以上です」  佐々木はそう言って立ち上がった。  大きく深呼吸をしてから、「帰ろうか」と由利と高屋に言った。 「あ……、うん」  二人とも戸惑いつつも立ち上がった。  そして、立ち去ろうと扉の前まで来てドアノブに手をかけると、もうこれで鈴木と会うことはないんだという思いが湧き上がってきた。  そのまましばらく考え込む。  このままでいいのだろうか。 「どうした?」  高屋が肩越しに訊いてくる。  ドアノブから一旦、手を離し、鈴木の方に振り返る。 「もし仮に、犯人が僕のことを心の底から恨んでいて、苦しいまでに復讐心を燃やして、強姦をしていたというなら、これ以上何も言いません。だけど」  もう一度、鈴木のところまで近づいて行った。 「だけどもし、復讐にかこつけて、自分の性欲を満たしていたっていうなら、それで何人もの人の体と心を傷つけていたっていうなら、俺は、絶対に許しません」  そう言い残し第二会議室を立ち去った。
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