三年20

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「何で、俺があんな奴に同情なんかするんだよ? 許せない気持ちしかないよ」 「明日まで一日待ってあげるのは鈴木先生に猶予をあげるためでしょ。自首しに行くための。でも、そんな猶予をあげた自分が許せなくて、最後、帰る前に鈴木先生にもう一言、言ったんでしょ。それでずっと悩んでるみたい。だけど、そんなに悩まなくてもいいんじゃないの? 大祐君は大祐君なりの考えがあって、その結果がこうだったんだから。明日になればきっといい方へ転がってるって。大祐君は間違ってない」  佐々木は頭を掻いて、笑顔になった。 「それは深読みしすぎだよ」 「そうかな? でも、もうこれで本当に終わりだね」 「そうだね。色々ありすぎて疲れたな。この間、ずっと勉強も止まってたし。はやく後れを取り戻さないとな」 「ねえ。今週の週末さ、どっか行かない? ここで、一区切りの意味を込めて、映画でも見に行こうよ」 「うーん。今週末は映画は無理だな。映画じゃなくて野球見に行かない?」  佐々木は含み笑いを浮かべている。 「野球? 大祐君、野球とか興味ないんじゃなかったっけ?」 「俺は興味ないし、行っても行かなくてもどっちでもいいんだけどな」 「何それ?」 「まあ、とにかく行こうよ。明日、高屋にも訊いてみる」 「高屋君も来るんだ?」  どうせなら二人で出掛けたかった。
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