エピローグ1

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 いつもの場所で佐々木と会った。  佐々木は自分の鞄を高屋の自転車のカゴに投げ入れた。  高屋は自転車から降りて、自転車を押す。 「今朝のニュース、見たか?」 「ああ、見たよ」 「何で鈴木は自首したのが、もう一人が逮捕された後だったんだ?」 「たまたまだろ。逮捕と自首のタイミングが一致したってだけのことだ。もしくは、もう一人が逮捕されたのを知って、観念して自首したのかもな」 「何で鈴木は相方が逮捕されたのを知ってたんだよ? 俺は知らなかったぜ」 「だから、たまたまかもしれないって言ってるだろ。俺も昨日はテレビを見てないから報道されてたのかは知らないから、俺にはそれは分からない」  受験生になって予備校に通うようになってからテレビを見る機会は極端に減った。  家に着くころには夜の十時を回っているし、そこから、ご飯を食べて、風呂に入って、就寝準備をしているとほとんど日付が変わる頃になっている。  その限られた時間をわざわざニュース番組を見ることに費やすことはない。  だから昨日もニュースは見ていなかった。  だけど、この際、それはどっちでも良かった。 「結局、俺たちがしたことなんて、何の意味もなかったってことか」 「そういうことだな。どっちにしろ、昨日であの事件は終わってたんだ」
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