エピローグ1

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 校舎に入ると、それぞれの教室で新聞が広げられていた。  高屋の教室でも何人か新聞を持って来て、いくつかのグループが出来ていた。  おそらく、学校に来る途中に買ってきたんだろうなと思った。  「おい、高屋。これ見ろよ」  クラスメートが話しかけてきた。 「学校に来る前に散々見てきたよ」 「そっか。お前もこれで安心だな。お前、この犯人に間違えられたって言ってただろ?」 「ああ」  佐々木の方を見た。  相変わらずの無関心な顔だった。  これは真実を言うのかどうかは自分に委ねているんだなと思った。 「そうだな。これで一安心だ」  嘘を言う気も、余計なことを言う気もなかった。  その理由は分からない。  ただなんとなくそうしたかった。 「おはよう」  今度は由利が話しかけてきた。   「おはよう」と佐々木とともにあいさつを返した。  佐々木が何か思い出したようにこっちを見て、「あ、そうだ」と言ってきた。 「どうしたんだ?」 「お前、今度の土曜日、暇だろ?」 「勝手に決めるなよ」 「お前を野球に誘っといてくれって頼まれてるんだよ」 「野球? 誰から?」 「河合って人から」 「あ、そういうことなの」  由利が言った。  始めは良く分からなかった。  河合という言葉と、自分の中の河合君が一致するまで時間がかかった。 「河合ってあの河合君?」
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