エピローグ2

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 帰り道、空は真っ青で雲ひとつなかった。  空一面にどこまでも海が広がっているようにも思えた。  どこかで世界の約八十パーセントは海だと聞いたことがあるのを思い出した。  本当にその通りだと思う。  かつてある偉人がこんなことを言ったそうだ。  人間の徳は風呂桶の水のようなものだと。  風呂桶の水を前に押すと、壁にぶつかって自分に返ってくる。  人間の徳も同様であって、誰かに対してしたことは自分に返ってくるという教えを残した。  だけど、そんなことはないと思う。  今、住んでいる世界は風呂桶ほど狭くない。  広大な果てしない広さの海なのだ。  そこで自分が起こした波は四方八方に広がる。  その波は目の前にいる人を振動させるかもしれないし、  今までもこの先も関わることがない人を振動させるかもしれない。  もしかしたら世界を一周して自分を揺らすかもしれない。  位相がずれれば、振動する正負も入れ替わる。  世界とはそういうものではないだろうか。  世界はつながっている。  自分の起こした波は必ず誰かに伝わる。  今回も強姦事件を追いかけていただけなのに、気が付けばその波が河合まで伝わっていた。  真っ青な空を見上げていると、そんなことが頭に広がっていた。  もし、この事件で自分たちが何も出来なかったとしても決して無駄ではないのだ。
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