一年2

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 ひったくりを捕まえた翌日、高屋は自転車に乗って学校へ向かっていた。  天気がいいと自然と自転車を漕ぐ足が軽快になる。  特にこの日は前日の出来事もあって、一段と足取りが軽い。  前日のことを思い出すと口元が緩んでしまう。  周りが奇妙な目でこちらを見てきたがそんなのはお構いなしだった。  あの後、佐々木が先に帰り、その場に残された高屋もさすがに居心地が悪くなり、帰ろうと思った。  サラリーマンの男は呼吸を整えようと腰に手を当てながら天を仰いでいた。  ひったくりは仰向けの姿勢から上体を起こし、座り込んでいたが逃げ出す気配はなかった。  ここは佐々木の言うとおり、二人に任せるべきだと思った。 「じゃあ、俺も、帰ります」  高屋は居心地の悪さに歯切れが悪くなってしまう。  高屋が背を向けた時、「ちょっと待ってくれ」とサラリーマンが言うのが聞こえた。  「捕まえてもらったのに、そのまま帰られるのはやはり気分が良くない。君の言うとおりね。君たち、あそこの高校の生徒だよな?」  そう言って高屋たちの学校の方を指差した。  気が付けば学校のすぐ近くまで来ていたのだ。 「いや、大丈夫ですって。と言うか捕まえたの、俺じゃないし」 「そういうわけにはいかないよ。大人として、ちゃんとお礼がしたいんだ」 「でも、捕まえたのは佐々木だし、その佐々木が受け取らなかったのに俺が受け取ることは出来ないです」
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