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「なら、その佐々木君も呼んでくれないか?」
「もう帰っちゃったし、あいつは何を言っても受け取るとは思えないんだけどな」
こちらがこんなに辞退しているのに、何でそんなにお礼を渡したがるのだろう。
これこそ、ありがた迷惑というやつじゃないか。
「受け取ってくれないとこっちの気が済まないよ。これもひったくりを捕まえてくれたのと同じ、人助けと思ってくれないか?」
高屋が返事に困っていると、サラリーマンはさらに続けた。
「正直、君たちみたいな高校生は好きじゃないんだ。実は、何年か前に、会社の同僚がいわゆるおやじ狩りというのに遭ってね。怪我を負わされたあげく、財布ごと盗られたんだ。しかも、その中には彼の息子の写真が入っててね。何よりも彼はそのことを悔しがっていた。彼の宝ものみたいなものだったからね」
「写真ぐらいもう一度撮れば済むでしょ?」
高屋には写真一枚よりも怪我やお金を盗られたことの方が重要に思えた。
サラリーマンは哀しげに首を振った。
「そうもいかないんだ。もうその息子とは会えないみたいだからね。離婚したんだ。前の妻が息子と彼が会うのを酷く嫌がっていてね。だから、もうかれこれ十年は会ってないんじゃないかな」
高屋は、えっ、と絶句した。
軽々しく、また撮ればいいと言ってしまったことを後悔した。
それを察したらしく、「君が気にすることじゃないよ」と言ってくれた。
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