一年3

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 由利が佐々木と付き合うきっかけになったのは、その秋の文化祭だった。  それまでは佐々木とはほとんど話したことはなかった。  もっとも、クラスのほとんどが佐々木とあまり話したことがなかったので、この時点で由利が特別な存在ということではなかったはずだ。  由利は当時、文化委員をしていて、委員長と副委員長の高屋と佐々木と三人で文化祭の準備を任されていた。  文化祭では、クラスごとに模擬店か展示のどちらかをしなければならず、それを決めるためのアンケートをする前に、まず三人で話し合うことになった。  場所は放課後の教室だった。 「どうする?」  高屋が言った。委員長らしく仕切るつもりらしい。 「明日のSHRの時間にでもアンケートを取ればいいんだろ? 何をわざわざ集まって話し合うことがあるんだ?」  佐々木が訊いた。  この話し合いは高屋が言い出したもので、由利にしても、とても意味があることだとは思えなかったので同じ疑問を持っていた。  佐々木が訊かなければ自分が訊いただろう。 「アンケートを取る前に俺たちで先に話し合っておいた方がいいだろ」  高屋が答えた。 「と言うことは、やっぱり意味がないってことか」  佐々木が言い返す。どう考えても、高屋の言っていることは理由になっていないという感じだった。  そして、呆れたように、「どうせ部活をサボりたかったんだろ」と言った。
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