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教室が静まりかえる。
由利は気まずさを感じたが、二人はそうでもなさそうだった。
男同士であれば多少の沈黙があろうとあまり気にしないのだろう。
また、それだけ二人の仲がいいということなのだ。
「なあ、帰りたかったら本当に帰ってもいいよ。結局、説教の原因もこいつにあるみたいだしさ」
佐々木が由利に言った。
大丈夫、気にしないで、と言おうとしたが、高屋がそれよりも先に答えてしまった。
「いや、だから残っててもらわないと困るんだって。何を急に話題を変えてるんだよ」
「でも、退屈だろ」
「ううん。大丈夫、気にしないで」
今度はちゃんと言えた。
「だったら、退屈させないように何かやってあげろよ」
高屋が佐々木に言った。
「文化祭の話し合いはどこにいったんだよ?」
「もうそれはいいだろ。何かやれよ。面白い話とか」
「しかも何で俺なんだよ。お前のために残ってるんだぞ」
「退屈だって言ったのはお前じゃないか。だったら、退屈させないようにするのはお前の役目だろ」
そして、高屋は何かを思い出した顔になり、「あ、そうだ、この前やってた手品、あれやってあげろよ」と言った。
「佐々木君、手品出来るの? 見てみたいなあ」
由利は自然と弾んだ声を出していた。
「いや、あんなの、人前でするものじゃないし」
佐々木は困った顔をしている。
自信がないわけではないが、自慢できるほどのものでもないという思いを感じた。
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