一年3

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「たまたまなんじゃねえの? 言ったって、二分の一だろ。俺もやってみてもいいか?」  高屋は痛快さを感じるよりも手品師だけが理屈を分かっている不平等さを強く感じるタイプのようだ。  特に相手が佐々木なら尚のことだろう。  本来同じ手品を二度するというのはご法度な気がするので断るのではないかと思ったが、意外にも高屋相手なら何度しても見破られないと思ったのか、佐々木はあっさりと「いいよ」と言った。  そしてまた同じことを繰り返した。  結果はさっきと同じ、成功だった。 「何で分かるんだ? 百円玉に何か仕掛けてるのか?」  高屋は百円玉を何度も舐めまわすように調べている。 「お前に急にやれって言われてやったんだ。仕掛けてるはずがないだろ」  佐々木が言い返す。 「まさか、本当に手から念じた声が聞こえるとか?」  由利は自信なく言った。  違うということは分かっているのだが他に思いつかない。 「いや、そんなはずはない。俺がやった時、こっちの手じゃないって念じたぜ」  高屋はそう言って首を振った。  佐々木はそれを聞いて苦笑していた。  まさかそんな超能力じみたことが自分に出来るはずがないのに、そんな小さな抵抗を試みたって意味がないことぐらい分かるだろ、と思っているに違いない。
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