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「そうだね。この間、高屋に見せたのが三年ぶりぐらいじゃないかな。たまに手品用品とか売ってると見たりするけど、自分からすることは無くなったよ」
「実際に買って披露したりしないの? 見るだけ?」
「俺って、手品をやったり見たりして純粋に楽しむよりも、どうしてそういうことが出来るんだろうって考えて答えを探そうとするタイプだから、手品自体よりも、手品用品とかを見て答えを探しているだけでも楽しいんだ。今なら普通に本格的なものも店に売ってるし。たまに、こんなの誰が使うんだよっていうくだらないパーティグッズとかも売ってるけど」
由利は、手品用品を前にして考え込んでいる佐々木を思い浮かべた。
何度も角度を変えて、答えを探している。
そして、答えを見つけて満足そうにその手品用品を売り場に返して立ち去る。
友達と仲良く遊ぶよりも、そっちの方が佐々木に似合っていると由利は思った。
「そっちこそ、手品、好きなの? やけに手品には食いつきが良かったけど」
今度は佐々木が訊いた。
うーん、と由利は少し考えてみる。
手品と聞いて心が躍ったのは事実だったが、なぜそうなったのかは分からなかった。
もやもやとしたものの輪郭を探るように話し出した。
「女の子は誰でも手品が好きだと思うよ。驚かされるのって楽しいし、それに何かミステリアスな雰囲気がある男の人って魅力的じゃない? 手品ってその雰囲気を醸し出させるような気がするよ」
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