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「悪口のつもりで言ったんじゃないんだけどなあ」
由利は困った顔をした。
からかうつもりで言ったのだから褒め言葉でないのは確かだがそれを認めてはいけない。
「でも、高屋みたいに全然違うタイプだからこそ仲がいいのかもね。もし俺みたいな奴が他にいたとしても、絶対に仲良くなりたいと思わないな」
由利が返事に困って、何度か首を傾げた。
何と言ったらいいのか分からない。
そうだね、とは言えないし、そんなことないよ、と言うのも嘘くさい。
そんなに困らせるようなことを言ったつもりはなかったのか、とりあえず何か違うことを何か言うべきだという感じで、「やっぱり俺たちって全然違うように見えるのかな?」と訊いてきた。
「どうしたの?」
由利は首を傾げたまま言った。
「いや、全然違うタイプって言ったけど、俺たちって実はあんまり変わらないんじゃないかって思ったりもするんだ。俺の中にも高屋のような部分があって、高屋の中にも俺のような部分があるんじゃないかって」
「えー、そうは見えないよ」
それはあり得ない。こうも違う二人を見たことがないというぐらい違う。
「もちろん、見える部分じゃなくて自分の内側の話だよ。人って他人から見えてるのってごくわずかだと思うんだ。いや、他人だけじゃなく、自分自身にも見えてない部分もたくさんあると思うし。だから自分でも気付いてないけど、心のどこかで何か近いものを感じてるかもしれないって思ったりもするんだ」
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