三年1

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「何だ。それなら自業自得じゃないか。お前がその女の人に何かしたんだろ」  そう言うと、高屋は慌てて否定する。 「ちょっと待ってくれよ。俺にはそんな覚えないし、そもそも俺がそんなことするわけないだろ」  高屋の言葉に反応せず、佐々木は考えを巡らせていた。  この話を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、数か月前からこの近辺で頻発している強姦事件のことだ。  夜道に一人で歩いている女を見つけて、車に引っ張り込むという手法をとっているということだった。  最近は市をあげての厳戒態勢をとっていたので鳴りをひそめていたが、一週間前にまた事件が起きてしまった。  と言うことは、高屋が強姦魔に間違えられたということなのだろうか。  佐々木は一度そう考えたがすぐに、いくらなんでもそれはないだろうと自分の考えを退けた。 「あの強姦事件の犯人に間違われたんじゃないのか」  佐々木は的外れを自覚していたが、高屋をからかうつもりで最初に頭に浮かんだことを口にした。 「ああ。今、話題のやつか。そうだとしたら、俺みたいな、見るからに優等生である奴と間違えるなんてあの三人組の思考回路が狂ってるとしか思えないな」 「お前は正常な思考回路を持った人からすると、充分、犯罪者に見えるけどな」
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