一年3

18/23
前へ
/263ページ
次へ
 翌日、由利が教室で友達と話していると、佐々木と高屋が入ってきた。  高屋は気軽にクラスメイトとあいさつを交わしていたが、佐々木は誰とも話そうとせず自分の席に向かった。 「おはよう」  由利は佐々木を呼び止めてみた。  背後で一緒に話していた友達が驚いて会話を中断した。  いつの間に仲良くなったのだろうかとこちらを窺っている。 「あ、おはよう」  佐々木は自然にあいさつを返してくれた。 「今日のSHRで文化祭で何やるか決めるんだよね」 「そうなんじゃないの。あいつに訊いてみれば?」  そう言って高屋の方を指差した。 「そう言えば、昨日、高屋君ってどうだったのかな?」 「ああ。こっぴどく怒られたらしいよ。まあ、そりゃそうだろって感じなんだけど」  佐々木の顔に僅かな笑みが浮かんだ。  嘲笑いの禍々しさはなく柔らかい笑みだった。  SHRでは高屋が司会をしてアンケートが取られた。  模擬店か展示のどちらをやりたいか、という内容でやりたい方に挙手をしてもらうという方法だった。  なぜそうしたかというと、最初は紙に書いてもらおうとしていたのだが佐々木が、「いちいち集計するのは面倒だよ。その場で手を挙げてもらった方がいいって。どうせ展示になるだろうし」と言ったからだ。  佐々木の言うとおり、書いてもらう紙を用意するところから始まり、その紙に希望を書いてもらい、それを集計するという手間を考えれば、挙手してもらうだけの方が遥かに楽だ。  由利も高屋もその意見に同意した。
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加