一年3

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 佐々木の予想通り、全員一致で展示に決まった。  模擬店なら休日まで学校に来ないといけなくなるし、準備も大変だ。  当然の結果と言えばそうだが、本当は模擬店をやりたかった人も中にはいたのではないかと由利は思った。  しかし、それを主張することが許されない空気だった。  それを見ていると由利はいたたまれない思いを感じた。  このクラスに入った以上、これからも模擬店は出来ないということなのだ。  こんな機会は一生でもそうないのに。  佐々木にそれを言うと、「本当にやりたければ、やりたいって言えばいいんだ。意外と一人が言い出すとぞろぞろと手が挙がったかもしれないしね」と突き放された。 「俺は展示で助かったよ。俺だって休みの日に学校になんか来たくない」 「でも、誰だって自分のやりたいことを主張出来るわけじゃないんだよ。あんな雰囲気じゃ、絶対に言えないよ」  うーんと首を捻り、そして、「あんまりそういうことを言われると悪いことをした気分になるな」と佐々木は頭を掻きながら言った。 「え?」  由利は思わず訊き返した。言っている意味が分からない。 「さっき俺が挙手制にしようって言っただろ。下手に紙に書かすと模擬店になる可能性が出てくると思ったんだ。ああいう空気になるのは分かりきっていたし、そうなると人は周りの空気に流される。本当は模擬店をやりたかった人だって、手を挙げることは出来なくなる。アンケートの取り方次第で結果も変えられる」
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