一年3

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 一瞬、言っている意味が分からなかった。  まさか佐々木にそんなことを言われるとは想像もしていなかったことだし、どういう流れでそのような言葉が出てきたのか分からない。  何より、佐々木の淡々とした言葉と表情が内容に現実味を持たせていなかった。  今までにもこのようなことを言われたことはあったが、もっとたどたどしく緊張を滲ませながら言うイメージだった。  なかなか言葉を返せない由利を見て佐々木が、「ダメかな?」と訊いてきた。  これまた淡々としている。 「いや、ダメじゃないけど。本気で言ってるの?」  これは確認しないといけない。  もしかしたら冗談で言って、雰囲気を和ませようとしたのかもしれない。 「本気だよ」 「だったら普通はもっと緊張してもいいんじゃないの?」 「結構、緊張してるんだけどな」  佐々木の顔にようやく苦笑が浮かんだ。  そこでやっと理解が出来た。  佐々木は嘘は言っていない。緊張している。  それを隠すために無表情を装っているのだ。  それは意図的なものではなく、癖の一つだろう。  最初に自分がどう見えているか訊いてきたのは探りを入れてきただけのことだったのだ。 「また明日、返事していい?」  すぐに答えるにはまだ準備不足だった。  でも自分の中での答えは決まっている。 「分かった。じゃあ、もう帰ろうか」  佐々木の顔はもとの柔らかい笑顔に戻っていた。  今、告白をして返事を保留されたばかりの相手と帰ろうとするも佐々木らしいなと思った。
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