三年2

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 SHRの終了と一限目の開始を告げるチャイムに佐々木の意識が現実に引き戻された。  今日の一限は木島の数学の授業だったので、間髪入れずに授業が始まる。  既に高校で習うべき単元は全て終了しているので、最近はひたすらに過去の入試問題を解いている。  そうした授業を一限目から四限目までこなして、昼休みになった。  昼休みには大半の生徒は食堂に行くので、教室には四十人近くいた生徒が十人ぐらいしか残らない。  佐々木たちはわざわざ食堂に行くのは煩わしいので、いつも一緒に佐々木の席に集まって家から持ち寄った弁当を食べている。  そこで高屋は改めて、自分が襲われた事件を話題にした。  この時までこの話題が話に出てくることはなかった。  佐々木はあえてその話題を出さないようにしていたし、他のクラスメイトも一度聞けば、興味を失ったのか、朝以降休み時間になっても誰もそのことを聞こうとしなかった。  唯一、休み時間に一度、高屋が顔の怪我について生徒指導の先生に呼ばれたのだが、自転車で転んだと嘘を吐いたみたいだ。
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