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実際、高屋はこの夏まで野球部のキャプテンを務めており、体格が良かった。
女性であれば数人で束になってかかっても、軽くあしらってしまうだろう。
「お前、親友がこんなになってるのに酷いな。今日にも俺はあの三人組に殺されるかもしれないんだぞ。そう思うと昨日は怖くて眠れなかったんだ」
「嘘吐くなよ。俺よりよっぽど顔色がいい」
その時、高屋は何かを思い出したかのようにあっという表情になった。
「そんなことはどうでもいいんだって。その後の方がもっと大事なんだ」
途中で口を挟まれたせいで、肝心の部分を言い忘れたようだった。
「どうして、俺がこの程度の怪我で済んだかって言うと、実は、俺が二発蹴られて、これはやばいと思った時に公園の入り口の方から誰かが大声で叫びながら走ってきたんだ。その大声に驚いたのか知らないけど、その三人組は逃げだしたんだ」
高屋はどうだと言わんばかりの顔になった。
そういうことだったのかと佐々木は納得した。
そのことが嬉しくて出会った時から興奮していたのだろう。
暴行に遭う人は少なくないだろうが、その場面で助けられる人は数えるほどしかいないはずだ。
だけど、暴行を受けたことには変わりなく、そのことを放っておいて嬉しそうに話すのは違和感があった。
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