三年2

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 佐々木の反論に負けじと高屋も反論する。 「お前は分かってないな。今ではピーター・パン症候群は褒め言葉としても使われるんだぜ。子供心をいつまでも忘れない大人を指すんだ。最初は間違った使い方でも、みんながその使い方をすると、それは正しい用法になることだってあるだろ。確信犯なんてその代表格だ。確信犯を間違えた使い方しても、文句を言うのはどっかの偉い人だけだ」  言い終えた高屋はしてやったりという顔をしている。  その表情は腹立たしいが、高屋の意見もあながち間違いではないので佐々木はそれ以上の反論はしなかった。 「わかったよ。でも試験の時にそう答えたら、間違いにされるから気を付けろよ」  その後、一瞬の沈黙があり、高屋が話を切り出す。 「やっぱりさ、今すぐ行動に移した方がいいんじゃないか? 思い立ったが吉日、というだろ。今日もまた、あいつらがあの公園に現れる可能性はかなり高いと思う。昨日は不意打ちだったからやられたけど、襲われると分かっていれば何とかなると思う。それに今日は二人だしな」  思い立ったが吉日、なんてよく出てくるなと思ったが、おそらく最近、漫画か本で見かけたのだろう。 「急がば回れ、ともいうだろ。相手も昨日と同じ方法で襲ってくるはずがない。出方が変わるのはお互い様だ」  今さっき日本語の正しい使い方を議論したばかりで、すぐに慣用句の言い合いをするのはどこか歯がゆさがある。 「それよりもお前を襲った相手はどんな奴なんだ? まさか、それも分からないってことはないよな」
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