三年2

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 高屋は最後の言葉に少し機嫌を損ねたようだ。  馬鹿にするなよ、という表情になる。 「三人組のだろ。暗くて顔ははっきり見えなかったけど、たぶん大学生ぐらいじゃないかな。リーダーは長めの茶髪で、身長はお前と同じ、175センチぐらいだと思う」 「他の二人は?」 「あんまり覚えていない。他の二人なんて所詮はわき役だから、どうでもいいんだよ」  不貞腐れた顔で高屋は言い訳とも開き直りともとれることを言ってきた。  これでは情報はないに等しい。  だけどそう言うとその顔がさらに不貞腐れそうだったので、「まあ、それもそうだよな」と言った。  さらに、「でも、もしそいつを見つけたとしても今日は何もするなよ」と続けた。  自分でも何回言うのだと思うのだが、こうでもしないと、高屋は勝手に動く可能性がある。  高屋は思考よりも感情に従って行動するタイプだ。  一方、佐々木はじっくり策を練ってから行動に移す。  こういうところでも対称的だった。  どちらが正しいかは一概には言えないが、少なくとも今は自分がリーダーシップをとることの方がリスクは少ないはずだ。 「わかってるって。しつこいんだよ、お前は」  高屋は未だに不機嫌な顔をしている。
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