三年2

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 高屋が言う小林とは、佐々木の中学時代の同級生であり、今は駅から見てこの高校の反対側にある女子高に通っている。  高校一年生の冬に、ちょうど由利と付き合い始めた頃に駅前でたまたま出会った。  そこで少し会話をしたのだが、運の悪いことにそれを高屋に見られた。  高屋は嬉しそうな顔でこっちに近づいてきて、「上本に言ってもいいのか」なんて言ってくるものだからむきになってしまい、「勝手に言えよ。別に言われて困ることなんてない」と応戦した。  本当にやましいことはなかったが、由利に言われるとややこしいことになることは分かっていた。  しかし、高屋はそんなことをわきまえる奴じゃなかった。  翌日、きっちりと由利に報告したのである。  しかも脚色を加えることを忘れずに、だ。  案の定、由利と付き合っていれば誰もがするような喧嘩を初めてすることになった。  そして翌日も出会った小林に、もう話しかけないでほしい、と告げた。その時の彼女の悲しげな表情は印象的だった。  それ以来、小林と出会うことはあっても話をすることはなかった。 「いや、怒るなって。授業中にちょっと昔のことを思い出してたら、気になったんだ。今どうしてるのかなって」  高屋は弁解するように両方の掌をこちらに見せた。
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