三年2

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「くだらないことを考えてないでちゃんと授業を聞け。ただでさえ成績が悪いんだから」  言いつつも佐々木は、高屋も自分と同じことをしていたのかと呆れてしまった。  以心伝心とでも言えばいいのか。  それでも高屋みたいに余計なことまで思い出していないのが救いかもしれない。 「でもさ、今の状況ってあの時と似てないか? あのひったくりを捕まえた時だよ」 「いや、全然違うだろ。あの時はたまたま巻き込まれただけだし、こうやって話し合うこともなかった」 「そうじゃなくて、気持ちの問題だよ。細かいことを言えばそりゃ違うけど、気持ちとしては似てるだろ。悪に立ち向かうって感じが」 「悪に立ち向かうのが悪かもしれないけどな」 「何で俺も悪なんだよ?」 「お前が強姦魔の可能性もなくなったわけじゃない」  高屋がむっとした表情になった。 「ありえねえって言ってるだろ」 「どうだろうな」  ぱっと時計を見ると昼休みがあと十分になっていた。 「次、体育だろ。さっさと着替えに行こうぜ」
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