三年4

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 午後の授業も終わり、みんなそれぞれに自分の勉強場所へと向かう。  受験が近づくにつれ、一秒も無駄に出来ないというような気迫が漲っていた。  佐々木たちもその中では例外ではなく、佐々木と由利は図書館に、高屋は親に無理矢理に入れられた予備校へ行く。  高屋本人は佐々木たちと図書館で勉強したかったらしいが、あまりの成績の悪さに親が息子の将来を案じたらしい。  今さらではもうすでに手遅れの気がするのだが何もしないよりはましだ。  校門で高屋と佐々木たちは別れた。  高屋はいつものように、「予備校って本当に面倒なんだよな。何で、学校で散々授業を受けたのにまた予備校で授業を受けないといけないんだ」というお決まりの台詞を残していった。  佐々木は由利と図書館へ向かう。  いつも利用している図書館の部屋に行き勉強を始めた。  入学以来の日課としていたから特に受験勉強というような気持ちはない。  ただ、あの当時と変わったことと言えば、夜八時まで勉強するようになったことと由利がいるということだ。  だけど由利とは図書館に入ると一切口を利かない。  もちろん、そこでいちゃいちゃと話をしていれば周りの迷惑であることを承知していたためでもあるが、何よりお互いがお互いにその時だけは踏み入れてはいけない領域を持っているように感じていた。  今の二人にとって、勉強を邪魔するということはタブーなのだ。
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