三年4

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 しばらく由利は考え込んでいた。  しかしすぐに、顔が明るくなった。  佐々木が何年も分からなかった答えをすぐに導き出してしまったみたいだ。 「それは多分、フック船長は自分の罪を心のどこかで自覚していたんじゃないかな。だから、本当は二人の実力差なんてなくて、わざとフック船長が負けたんだよ。素直に自分の罪を認めることはもう立場上、出来なくなったから、最後は自分のライバルのピーター・パンに自分の罪を裁いて欲しかったんだよ、きっと」  由利は自分で言った見解に何度も頷いている。 「行くところまで行って引き返せなくなったってことか。そういう風に考えられないこともないかな。謝るタイミングを逃すと最後はワニに食べられちゃうってことだったのかな」  佐々木は冗談交じりに言ってみた。 「そうだよ、きっと。間違いない」  由利は自分の考えを言葉にして話すことで自信を深めているようだった。 「でも、それは深読みしすぎな気もするけど」 「物語の解釈なんて、読んだ人の数だけあるって言うじゃない。だから私の説も正解だよ」  由利がそう言って悪戯っぽく笑ってみせた。 「そうだね。解釈は自由だ」  この何気ない時間と会話をじっくり噛みしめるようにゆっくりと歩いて行く。  こんな時間もあと僅かなのだ。
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