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その後、他愛もない話をいくつかして学校にたどり着いた。
校内では通学路よりもじろじろ見られる。
佐々木たちの高校は、県内有数の進学校を自称するだけあって、顔に傷を負った男はもの珍しいのだろうが、やはり不愉快だった。
怪我をしているのは高屋であるのに、あたかも怪我を負わせたのが高屋であるような怯えの目を向けられる。
周りが通り道を開けるような雰囲気があった。
そんな中で最初に声をかけてきたのは、上本由利であった。
「高屋君。どうしたの、その顔?」
由利と佐々木は高校一年の秋から付き合っている。
肩にかかる程度の髪の長さの、大きな瞳が特徴的な女の子だ。
彼女は教室に入ってきた二人を見ると、佐々木にあいさつをする前に高屋に声をかけた。
佐々木はその二人の方をじっと見た。
「聞いてくれよ、由利。実は昨日さ……」
高屋は通学時にした話を始めた。
由利が話しかけたのがきっかけになり、他のクラスメイトも話しかけてきた。
最初は戸惑っていても、由利が話しかけたことで安心したみたいだ。
「お前、大丈夫なのか」
「警察に行った方がいいって」
みんなが、それぞれ心配を口にする。
やはりこのクラスでも高屋の怪我は好奇の的だった。
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