三年5

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 授業が終わり帰宅しようと予備校の玄関まで行くと野球部の後輩が立っていた。  名前は松木と言って今は二年生だ。  ポジションはキャッチャーで一年の秋からレギュラーを張っていた高屋を尊敬していていつも部活中は付いて回ってきた。  そんな松木を高屋は弟のように可愛がっており、自分の後のキャッチャーはこいつにしてくれと監督に頼んだりもした。  その甲斐あってか今ではレギュラーとなっていた。 「あ、どうも高屋さん。今から帰りですか?」  松木もこちらに気付き手を挙げている。 「そうだよ。やっとあのめんどくさい授業が終わったよ」  こういう愚痴を言うと気が少し晴れた。 「でも、もうそんなことも言ってられない時期でしょ? 受験まで半年ぐらいしかないんだし」 「それはそうだけどさ。お前こそ予備校通いは早すぎるだろ。部活もやって予備校通ってじゃ、そのうちパンクするぞ」  聞いた話では高屋が通い出すのよりひと月ほど前から通っていた。 「俺もそう思うんですけど、親がどうしてもって言うんで。野球部って他に比べると引退の時期って遅いでしょ。だから今のうちからじゃないと間に合わないって言うんですよ。最後には、野球やりたければ予備校行けとまで言ってきたりしたんですよ。もうこれじゃ脅迫でしょ?」  松木はうんざりした顔になった。
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