三年6

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 その作業を一通り終えて時計を見ると十一時を回っていた。  今日はまだ早い方だった。  遅い時は一時までかかることもある。  せっかく早く終わったので、時間がなくて読めていない本を取り出してきた。  こういう気分転換も受験勉強には大事なのだ。  また小説を読むのは現代文の勉強も兼ねていて一石二鳥だった。  ベッドに横になり、枕の上に本を広げた。  いざ読もうと思ったが、ふと帰り道の佐々木との会話を思い出した。  ウェンディとティンカーベルのことだ。  恋のライバルか、と昼休みに高屋の会話に急に登場した小林のことを思い出した。  お互いに全く面識はない。  だけどもし、彼女と友達であったなら、どうなっていただろう。  友達とまではいかなくても近くにいたとしたらどうだっただろう。  自分はティンカーベルのように意固地なことをしてしまうのだろうか。  ティンカーベルの気持ちも分かるのだが、逆にそんなことをするとマイナスにしかならない気もする。  それをわきまえているからおそらくは自分はそんなことはしないはずだ。  しかし、すぐに実際の状況と頭の中で描くことは全く違うということに思い至った。  現実にはやっぱりティンカーベルのようになってしまうのだろうなと思った。
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