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「おい、どうした?アイスティー、ミルクと分離しちまってるぞ」
「え?あ、あぁそうね…」
前の席に座る男に指摘され、自分が先日の友人とのやり取りにトリップしていたことに気付いた。目の前の男は土方十四郎。私の七つ上の恋人である。
彼は全くと言っていいほど私に手を出してこなかった。キスもしないし、手だって滅多につながない。もちろんその先なんてしたことがある訳がない。
「大丈夫か?お前、今日ずっと上の空だぞ。どっか具合悪いとか…」
「ごめん、大丈夫だよ」
土方さんは、すっとゴツゴツとした手を出して、私の額に触れた。
「本当か?……熱は…ねぇな」
こういう時は躊躇いもなく、触ってくれるのに…。私はいつまでも紳士的な彼に苛立ち、ため息をついた。
今日だってお泊まりの約束だけど、何かしら理由をつけて帰るか、別々の部屋だ。
「…でも、念のため今日はもう帰るか」
ほら、やっぱり。
やっぱりね。
わかってる、わかってた。
でも、もう私も限界だよ。
優しい?紳士的?大人?
そんなの全部、全部、全部いらない。
「嫌だよ、帰らない…」
優しさなんてもういらないの。
「由美?」
私はここが喫茶店だということを忘れ、かぁっと頭に血を上らせた。
その場の勢いで、ガタン!と椅子を倒して立ち上がり、土方さんのスカーフを掴んで叫んだ。
「お願いだから奪ってよ、強引にでも!」
私は唇を無理矢理彼の唇に押し付けた。
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企画に提出。
ずいぶんヘタレな土方さんが出来上がってしまったが。
まぁ、このあとはもちろんいただきます。されちゃいます(笑)
大切過ぎて手が出せない、ベタな設定です。
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